ターミナル
- 出版社/メーカー: 角川エンタテインメント
- 発売日: 2005/04/28
- メディア: DVD
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トム・ハンクスの熱演あっての作品であることは確かだが、それを割り引いても少し切なく、少し幸せな気分に浸れる佳作。シリアスな設定にもかかわらず、ストーリーはファンタジーだし、演出はコメディのそれに近い。お涙頂戴的展開を期待しても裏切られることだろう
空港という限定された空間でも、知恵を絞ればサバイバルが成り立ってしまう、というところが実に面白い。現実はこんなにうまくはいかないだろうが、突き放した状況下を作り出した上で偶然に頼らずに問題を解決させる演出は好感が持てる。人によっては中途半端と思うであろう主人公のラブロマンスも、わしには成就しないことが逆にリアルに感じられた。エピソードの一つ一つはやや荒唐無稽でご都合主義的と言えなくも無いが、アイディアの面白さゆえにさほど抵抗無く受け入れられる
ヒロイン的な役割を担うのはキャサリン・ゼタ・ジョーンズ。この映画を見るまで、わしは彼女を魅力的だと思ったことはなかったのだが、今回初めて彼女をかわいいと思ってしまった。どちらかと言うと悪女キャラだし、この作品の設定でも不倫していたりするのだが、この作品ではふとしたところで見せる仕種や雰囲気が意外なほど柔らかく女性らしかった
極端に派手にならず、ハリウッドの大作にしては抑え目の演出は概ね好感触なのだが、ストーリーのバックボーンとなる「ジャズ」に対する愛情がまったく感じられないのは、スピルバーグ自身の嗜好ゆえだろうか?ジャズミュージックへの思い入れがないぶん、せっかくの仕掛けが生きてない気がする
大いにいただけなかったのが日本語字幕。なんなんだあの「スッチー」って訳は。普通に「スチュワーデス」でよかろう?それとも「客室乗務員」にするよりマシとでも思ったのか?出国監査の女性が趣味を問われて「コンベンション」と答えたのを「大会」と訳したのも解せない。直訳はそうなんだろうが、あれでは会話が成立すまい。たぶんなんかの趣味の集いのことを話したのだと思うのだが、その辺はよく聞き取れず。ちなみに字幕はおなじみ戸田奈津子の手によるもの。わしは以前から彼女の無理に若ぶった翻訳センスに疑問を呈してきたのだが、この「ターミナル」の訳はいつにも増して珍妙な感じがした。DVD化する際にはぜひとも手直ししてほしい