「飛ぶ教室」
せっかく面白い作品を見たのに、頭が回転してなくてうまくまとまらない
- 出版社/メーカー: 松竹ホームビデオ
- 発売日: 2004/08/25
- メディア: DVD
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何度も転校を繰り返してきた少年ヨナタン。そんな彼が新たに転校してきたのは、少年合唱団で有名なライプチヒの寄宿制学校。そこで彼は、マルティン、ウリ、ゼバスチャン、マッツという個性豊かな仲間たちと知り合い、仲良くなる。寮生の彼らは、自宅から学校に通う通学組と何かと衝突する。合唱団を指導するベク先生はたびたび問題を起こす彼らを優しく見守り、規則ずくめの生活を送ることより、友情を重んじることの大切さを説く
ある日、ヨナタンたちは「隠れ家」にしている列車で「飛ぶ教室」という舞台の脚本を見つける。その内容をすっかり気に入った彼らは、クリスマスに上演する舞台劇の題材として稽古に打ち込むが、練習を見たベク先生は訳も無く「飛ぶ教室」の上演を禁止してしまう、、、といったストーリー
この作品には基本的に根っからの悪人は登場しない。かと言って決して文科省ご推薦の良い子ちゃんばかりが登場するわけでもない。個性豊かな子供たちの寄宿学校での生活がいきいきと描かれる。いつもは明るく、大人から見れば気ままに暮らしているように見える彼らにも、それぞれに過去があり、家庭の悩みがあり、コンプレックスもある。真面目で、正義感が強く、優しいだけに見えるベク先生もそれは同じ。映画は、子供には子供の世界があり、大人も同様だが、それらに隔絶はなく、密接にリンクしている、ということを教えてくれる
サイドストーリーとして用意されたベク先生と親友ボブの物語が、途中一応謎解きの要素を含んで進行するのだが、あまりに伏線がバレバレ過ぎるのが少々残念。東西ドイツの分断と統一という現代的なテーマを盛り込んだのは、日本人のわしから見ればいかにも強引に映るが、案外ドイツ人には共感を呼ぶものなのかもしれない
一本の映画として観たとき、連続する事件からラストの舞台上演までの展開が少々拙速に過ぎ、消化不良という気もするが、あまりにすばらしい子役の演技のせいでそれを忘れてしまう。「点子ちゃんとアントン」のときも感じたことだが、こういうストレートな子供向け作品を商業ベースで堂々と作れる素地があることがスゴイ。近年の日本では映画は基本的に子供の娯楽ではなく、子供向け作品はすべからくアニメと相場が決まっている。わしはアニメーションを劇映画と区別するつもりはないが、日本の「子供向け」と称するアニメ作品は、そのほとんどが玩具とのタイアップを基本にしており、常に品質よりも商業性が優先されているように感じる。「クレヨンしんちゃん」の劇場版やジブリ作品などの例外はあるにしろ、この作品のように親子が安心して楽しめる良質のエンターテインメント作品は意外に少ないのではないだろうか?
ぜひとも子供に見せたい作品。でも、できるなら無理強いせず、しかし子供のそばに置いて、いつか子供自身が進んで見るのを待つ、、、そんな楽しみ方をしたい作品だ