カメラと映画と日本が好き

平成27年6月にはてなダイアリーから引っ越し。岩手県在住の49歳会社員。某マスコミに近いところ勤務。家族:相方&息子 祖国の未来を憂い、特定アジアと国内の反日分子を叩くことに燃えつつ、のほほんと写真を撮ったり映画を観たりするのを趣味とする男の日々。平成26年に突如としてランニングをはじめ、現在ドハマり中

「アリーテ姫」

BS-hiで録画しておいたのだが、長いこと観るのを忘れていた「アリーテ姫」をようやく観た

アリーテ姫 [DVD]

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婿になるべき男性が現れるまで、塔に閉じこもり無垢なるその身を守ることを定められたアリーテ姫が、自由を求めて城を抜け出そうとするが、そこへ魔法使いの生き残りを自称する男が現れる。魔法によって心を閉ざされた姫は男の妻となり、彼の住む城の地下に幽閉されてしまう。夢にまで見た城下の外へ出ることはできたものの、自由を求める本当の心を封じ込められてしまったアリーテ姫。助けるものもなく、頼れるものは自分の力のみ、、、、といったストーリー

監督はテレビアニメ・世界名作劇場等の演出や宮崎駿の「魔女の宅急便」で監督補を務めた片淵須直。地味ながら丁寧な生活描写が特徴だ。題材がいわゆる西洋風のファンタジーにも関わらず、物語は終始淡々と進み、派手さはまるでない。シンプルな描線と落ち着いた色合いの作画もやや古臭い印象を与えるが、アニメファン層に対する媚びが一切見られない点は個人的にかえって好印象だ

物語は「姫」を主人公に据えながら、思春期の少女に共通の「自分探し」を主題に展開する。本物の魔法は既に廃れてしまったが、さまざまな物を作り出す職人たちの手には「魔法のようなもの」が宿る。そうであれば自分の手にも何かができるはず、、、これが姫の「自分探し」の原点。自分が今まで何のために生かされてきたのか?自分はいったいどこへ行くのか?定められた運命に身を委ねるだけの人生でよいのか?といった少々青臭い問い掛け、その答えを求めてアリーテ姫は行動する

テーマはまあいいのだが、長時間見続けるうちに正直なんでこんな幼い問い掛けにつき合わされなきゃならんのか?という疑問が沸々と湧いてくる(笑)。心の中で自分自身の物語を紡ぎ出すことが事態の打開に繋がる、という部分も「人の心には大きな力がある」というシグナルであることは理解できるのだが、引っぱった割に展開があまりに安直でズッコケてしまった

今ひとつ作品が提示するメッセージに共感できないのは、それが子供たちに対する気恥ずかしいまでに真摯なメッセージだからだろう。10代の若者なら大いに共感できたのかもしれないが、「おっさん」に足を踏み入れたわしにはどうにも照れくさくて、素直に受け止められない。「自分探し」に何か得体の知れない希望(らしきもの)を見出すような心は持ち合わせていないのだろう

受け入れる側の心の問題もさることながら、キャラクターの魅力が足りないこともまた確か。観終わった後思い出せる登場人物が姫、魔法使い、魔法使いの飯を作る女くらいしかいない。その他のキャラクターは登場しても「表示されている」に過ぎず、中身がまるで無い。実は姫と同様、新しい展開を待ちわびていた魔法使いの浄化のドラマも唐突に過ぎて、説得力に欠ける。いずれも人物の関係構造が単純すぎて、それらが絡み合うことも無かったため、キャラクターに深みが生じなかったことが原因だろう

唯一人、アリーテ姫自身の描き方だけは悪くない。とくに生きる力を取り戻していく終盤の描写は力強く、なかなか見応えがある。しかしそれだけに最後に金の鷲を独力で見つけ出す過程がすっかり省かれて、何か「あっさりできました」という感が残ってしまうのが惜しい。一人、町で生きていくことを決意するのもいいが、そんな甘口の答えでいいんですか?という疑問も残る。もう少し最終盤のアリーテ姫の「解放」に尺を割いたほうが、メッセージに説得力が出たのではないかという気がする

非常に真面目に作られた作品であることは間違いない。近頃に珍しく、商業性をあまり感じさせないこのようなアニメーション作品を製作したこと自体、大いに評価できると思う。それだけに素直に受け止められなかったことが残念

でもまあ、わしのようなおっさんはいい。できれば中高生くらいの子に観て欲しい作品。しかしながら、最もその年代に受けないであろうと思われる地味な作風というジレンマ。作品の不幸な行く末を思うとき、思わず「オー!ノー」と頭を抱えずにはいられないわしなのであった