カメラと映画と日本が好き

平成27年6月にはてなダイアリーから引っ越し。岩手県在住の49歳会社員。某マスコミに近いところ勤務。家族:相方&息子 祖国の未来を憂い、特定アジアと国内の反日分子を叩くことに燃えつつ、のほほんと写真を撮ったり映画を観たりするのを趣味とする男の日々。平成26年に突如としてランニングをはじめ、現在ドハマり中

自国を卑下するための行為

8月4日付岩手日報夕刊「声」欄、水沢市の無職・千葉勝士さん(64)の投稿「日独で異なる戦争責任意識」

 今年は戦後六十年になる。加藤周一さんの戦争責任の受けとめ方を読んだ。
 東京裁判東条英機元首相以下の戦争犯罪人たちは、口裏を合わせたように「戦争が始まったからには、これに従わざるをえなかった」という。訴えられた事柄は自分の権限外のことで、戦争犯罪人たちの誰もが自分には責任がないーと。
 ドイツの場合、ニュルンベルク裁判の被告ゲーリングゲッペルスも「私がやった」「私はそれを望んでやった」「私が決定した」「だから責任を取る」と言った。
 一億総ざんげとは、一人の責任が一億分の一で限りなくゼロに近いということ。誰も責任を取らないと同じだ。
 ドイツではニュルンベルク裁判以降、政府、裁判所、さらに一般国民の間でーと社会全体で戦争犯罪を追及し、責任を取ろうとした。戦争犯罪に時効がないということだ。
 過去の犯罪を水に流すという姿勢はとっていない。ナチ政権との関係の明らかな人間が指導的立場に立って、政党の領袖や大臣になった例がない。日本はどうだろうか。
 ドイツではまだ、イスラエルポーランドチェコ、東欧諸国やロシアへ賠償支払いが行われている。日本も戦争責任や賠償金をはっきりさせるべきだ。

正直言って内容があまりに幼稚すぎて、こんなものに反論するのも涙が出そうなほど馬鹿馬鹿しいのだが、水沢市の投稿者ということなので同郷のよしみで取り上げさせてもらった。大変申し訳ないが、ここに書いてあることはすべて氏の不見識・不勉強によるものだ。加藤周一が何を書いたのかは知らないが、もう少し自分なりに調査、分析した上でこういうことは書いて欲しい

まず「戦争犯罪」とは戦闘の過程における、国際法の定める戦争のルールを逸脱した行為のことを言う。ドイツがニュルンベルク裁判以後補償に取り組んだナチの犯罪とは、ドイツ国内および占領地域でのユダヤ人虐殺、国内でのジプシーや心身障害者への虐待・殺戮、ポーランドやロシア占領地域での知識人・指導者層の殺害などであり、いずれも通常の戦争犯罪とは明確に区別すべき「国家犯罪」である。この程度は基礎知識として抑えておいて欲しい

ドイツではまだ、イスラエルポーランドチェコ、東欧諸国やロシアへ賠償支払いが行われている

なぜか?それはドイツが東西統一まで戦時賠償を棚上げしてきたからにほかならない。ドイツがニュルンベルク裁判以後取り組んできた賠償は、前述のナチの「国家犯罪」に対する個人補償に過ぎない

日本も戦争責任や賠償金をはっきりさせるべきだ

では日本の賠償はどうか?サンフランシスコ平和条約では「戦争遂行中に日本国およびその国民がとった行動から生じた連合国およびその国民の他の請求権」は「放棄する」とされ、米英仏など45カ国が調印している

さらに日本は、サンフランシスコ平和条約に調印しなかった国々(主に戦後独立した東南アジア諸国)に対しても個別に正式な協定のもと賠償を行い、清算を完了してきた(対北朝鮮だけは未解決)

そのほかにも戦前戦中に保有していた預金、不動産、工場、鉄道、生活インフラなどの在外資産をすべて放棄、事実上当該国に譲渡している

ドイツではニュルンベルク裁判以降、政府、裁判所、さらに一般国民の間でーと社会全体で戦争犯罪を追及し、責任を取ろうとした

ナチの犯罪は通常の戦争犯罪ではないことを重ねて指摘しておく。それはさておき、ワイツゼッカー大統領は有名な「荒れ野の40年」でこう言っている。以前にも書いたことだが、しつこくもう一度書こう

罪のある者もない者も、老若男女いずれを問わず、われわれすべてが過去に責任を負っている

これはよく「ドイツ国民はナチに犯罪の責任を押し付けず、反省している」という意味に解釈されているが、これが大いなる誤認であることは朝日新聞が行ったワイツゼッカー氏のインタビュー内容から証明されている

人は自分に罪がないことにも責任をとることができる。例えば、私の自動車を他人が運転して事故を起こしても、私は賠償責任を負う

これを読めばワイツゼッカー氏が「罪」と「責任」を明確に分けて話していることがよくわかる。つまり「ドイツ国民は賠償責任を負うが、罪はあくまでもナチスだけのものである」と言っているのだ

しかし忘れてはならないのは、悪名高いナチス党もワイマール憲法施行下で、民主的かつ合法な手続きを経て権力の座についたという事実だ。それでも国民にはまったく罪がないと言えるのか?その答えは一旦置くとしても「罪を認めず賠償だけはする」というのが国家としてのドイツの態度であるということは知っておくべきだろう

少し調べればはっきりするこの程度の知識を踏まえずに、固定観念からドイツを礼賛し日本を非難するような行為は、単に自国を卑下する目的で為されたものと思われても仕方あるまい。反省を口にするのは結構だが、盗人の言に惑わされて身内の財布の紐を緩めるような行動は厳に慎んでいただきたい