パプリカ
今敏監督の最新作ということで事前調査なしの信用買い。相変わらずイマジネーションの洪水とでも表現したくなるような精緻かつ奇抜な映像作品
- 出版社/メーカー: ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
- 発売日: 2007/05/23
- メディア: DVD
- 購入: 3人 クリック: 145回
- この商品を含むブログ (400件) を見る
極力言葉でストーリーを語らず、映像から得られる圧倒的な情報量のみで作品全体を押し切ってしまっているのがすごい。しかしその密度があまりにも濃い上に、観客に物語の整理を促すような一息つく場面もないので、受け取るべき情報を一瞬でも見損なってしまうとそこから先の展開に観客が付いていけなくなってしまう危険性も伴う
物語そのものはDCミニを用いた犯罪の黒幕を追う夢探偵パプリカの活躍を描く形で展開するため、必然的に「謎解き」がその根幹に置かれているのだが、その割には仕掛けが意外に単純で少々拍子抜けしてしまう感もある。とは言え前述のようにしっかりと必要な情報を受け取り続けた観客「だけ」にしかその単純さが理解できない構造になっているので、「ながら見」はもってのほか。「ついて来れなきゃ、ついて来なくていいよ」という客を選ぶつくりは作者の傲慢と受け取られても仕方ないかもしれない
黒幕が判明した後の展開はよりシンプルなものになり、意外性はまったくと言っていいほどない。もうあとはひたすら映像と音楽の素晴らしさを楽しむのみ。ストーリー上で気になった点をあえて挙げれば「黒幕の犯行動機」。あれだけの大犯罪を犯した割に、その理由があんなんでええのかいな?という疑問は禁じ得なかった。まあ、それを言ったら千葉はどうして時田に惚れたの?とか、まったくもって説明不足で意味不明なのだが、、、
粉川警部の夢の場面で繰り返し描かれる過去の名画の場面の数々や、映画製作者としてあるいは観客としての自己の姿が「映画」そのものを「夢」の比喩として用いた作者の自分ツッコミ的要素を持っていたりするのも面白い。この辺うまく文章で表現できないのだが、観さえすれば感覚的には理解できることと思う
内容以外の要素では、劇場用アニメ大作にありがちな、根拠の無い「非アニメ声優」起用とは無縁な声のキャスティングが目を引く。これは結果として成功していると思うのだが、結局は映像と音声がしっかりマッチして、違和感を感じさせさえしなければ、「一般俳優」やら「非アニメ声優」にこだわる理由も無いということか。この「成功」が、話題づくりのための「非アニメ声優」起用があまりうまく行っているとは思えなかった「スチームボーイ」や、「自然な声にこだわる」などと理屈をこねる割には違和感だらけの近年のジブリ作品への良い意味でのアンチテーゼとなれば、と思う