カメラと映画と日本が好き

平成27年6月にはてなダイアリーから引っ越し。岩手県在住の49歳会社員。某マスコミに近いところ勤務。家族:相方&息子 祖国の未来を憂い、特定アジアと国内の反日分子を叩くことに燃えつつ、のほほんと写真を撮ったり映画を観たりするのを趣味とする男の日々。平成26年に突如としてランニングをはじめ、現在ドハマり中

「茄子 スーツケースの渡り鳥」

正確には映画ではなく、OVA(オリジナルビデオアニメーション)なのだろうが、一応便宜的に「映画」と「その他」にジャンルを振っておく

茄子 スーツケースの渡り鳥 [DVD]

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前作「茄子 アンダルシアの夏」では解雇寸前の崖っぷちサイクルレーサー・ペペの地元でのレースと、彼を取り巻く人間模様がパラレルで進行する構造になっていたが、今回は少々趣を変え、ドラマ部分とレース部分を切り分けた構造になっている

前作ではペペの個人的な状況に焦点が置かれていたが、本作品はレーサー達のそれぞれの立ち位置により深く踏み込んでいる。ステージ優勝はしたものの超一流にはなれず、ポイントを重ねることで自らの生き残りを図るペペ。マルコというヒーローの喪失により、決してトップになれない自分の存在意義を見出せず葛藤するチョッチ。いまだトップレーサーでありながら、衰え行くことを自覚し、同じくトップレーサーでありながら峠を過ぎたマルコが死を選んだことと向き合うザンコーニ。すべてのレーサーは確かに「勝つ」ためにレースをしているのだが、そうは言ってもそれぞれの力の差というものが厳然として存在し、トップレーサーもいつまでもトップではいられない。このあたりの実際にレース界にもあるレーサーそれぞれのドラマがしっかりと描かれており、群像劇の様相を呈して実に面白い。とくにザンコーニが自らの判断でレースを終える場面が印象深い。一見意味がわかりにくい場面なのだが、これはマルコが選んだ人間として生物としての「死」に対して、ザンコーニはトップに立ちながら本来のゴールの前でレースを棄権するという、言わばレーサーとしての「死」を選んだのだとわしは解釈した。それがマルコに対するザンコーニなりの答えなのだろう*1

レースシーンは前作にも増して迫力がある。駆け引きの緊張感、追い込みの疾走感、風を切って走るときの爽快感。そのすべてがシンプルな線で描かれたセルアニメーションであるにも関わらず、非常に高いレベルで表現されている。わしは自転車レースには詳しくないが、本物の自転車レースファンでも納得できる出来なのではないかと思う

出来うることなら同じスタッフで自動車レースものを作れないものだろうか?(できればF1)。自動車レース映画は数あれど、こういうリアルで骨太のドラマを持ち込んだ作品って無いもんな〜。ぜひやってほしい

小品ながらかなりおススメできる仕上がり。ジブリ色の濃い作画にアレルギーのある人もいるかもしれないが、作品そのものは別物なので十分楽しめるのではないだろうか

*1:ところでこいつら何語で会話しとるんじゃ?w