カメラと映画と日本が好き

平成27年6月にはてなダイアリーから引っ越し。岩手県在住の49歳会社員。某マスコミに近いところ勤務。家族:相方&息子 祖国の未来を憂い、特定アジアと国内の反日分子を叩くことに燃えつつ、のほほんと写真を撮ったり映画を観たりするのを趣味とする男の日々。平成26年に突如としてランニングをはじめ、現在ドハマり中

ジョンQ

先週テレビで再見。随分前に観た映画なのでとっくに感想書いたかと思っていたら、書いていなかったので一応触れておく

貧しいながらも妻と息子の3人でそれなりに幸せに暮らすジョン・Q・アーチボルト(デンゼル・ワシントン)の一家。野球の試合で倒れた息子に下された診断は深刻な心臓疾患。心臓移植しか助かる道がない。しかし移植治療のためには莫大な金を用意しなければならない。ジョンは長年加入していた保険に頼ろうとするが、会社の費用削減のあおりで保険金が下りないことがわかる。懸命に金策に走るも、病院側から息子の退院を宣告されたジョンは人質をとって病院に立てこもる、、、といったストーリー

全般としてジョンQの行動が肯定的に描かれていることにまず合点がいかない。この作品の評価はジョンQの行動に同情できるかどうかに左右されると言ってよい。よってわしの低評価はほとんどここで決まったようなものだ

普通に考えてジョンの行動は単なる犯罪であって、法的にも倫理的にも許されるとは思えない。それが例え息子の死を目の前にした父親の愛情から発したものであろうとも、凶器の銃に弾丸が入ってなかろうとも、人質が全員無事だったとしても、やはり同じことだ。同じような疾患に苦しんでいる人ならほかにもいる。臓器移植は順番待ちであって、その順番が来る前に亡くなる人もたくさんいる。肉親から臓器を提供されたのに適合条件に合わず、移植を断念する人もいる。お金が無くて手術に踏み切れない人だっている。それらをほとんど無視して医者を脅し「息子に(自分の)心臓を移植しろ」という親を何と言うか?自分勝手で危険なヤツとしか言いようがなかろう

描きたかったのがアメリカの低所得層の悲哀であって、医療保険制度をはじめとする社会福祉の問題点であったことは理解できる。が、あまりにも描き方が短絡的で乱暴。いくら子供のために必死なだけだと言われても「身体の張り方が違うだろう?」「命の懸け方が違うだろう?」と

さらに細かいことを言えば、移植医療に対する認識も甘すぎる。臓器移植の中でも心臓移植はタイプが適合したとしても拒否反応との戦いの連続であり、移植後も免疫抑制剤を服用しつづけなければならないはず。しかもその副作用は小さくない。あんな簡単に退院して「めでたしめでたし」とならないことくらい素人のわしでも知っている。本気で医療をテーマにした社会派ドラマを作りたいのなら、そのくらいの基礎知識は押さえた上でやってくれないと困る

映画のラストでは、裁判にかけられたジョンQの判決が有罪になると、会場から溜息が漏れ、妻*1が不満げな表情を浮かべるのだが、これが有罪でなくて何が有罪なのか?と逆に問いたくなってしまった

正直わしはこの映画を評価できない。言いすぎかもしれないが、バカ親の単なる傲慢をご都合主義的幸運の連続で無理矢理「親子愛の物語」に仕立て上げようとしているようにしか見えない。せっかくデンゼル・ワシントンやロバート・デュバルが出演して重厚なドラマの雰囲気を醸し出しているのに、肝心の物語が粗雑ではどうしようもない

*1:この妻も思い通りにならないとすぐ夫に無理難題をふっかけるのでイライラする