かぐや姫の物語
- アーティスト: 久石譲,東京交響楽団
- 出版社/メーカー: 徳間ジャパンコミュニケーションズ
- 発売日: 2013/11/20
- メディア: CD
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高畑勲14年ぶりの新作は日本最古の物語文学「竹取物語」に題材をとったということで、どんなアレンジをしてくるのかと思ったら、予想していた以上にストレートな古典文学の映像化だった。原作の再現度という意味では、かつて高畑が「セロ弾きのゴーシュ」や「じゃりン子チエ」などでも原作をしっかりとなぞった上で独自の解釈と演出を持ち込んだ方法を踏襲している、と言ってよいだろう
本作の宣伝コピーは「姫の犯した罪と罰」。これもまたド直球で作品の描き出すテーマそのものと言って差し支えなかろう。ではその「罪と罰」とは何なのか。「罪」の方は比較的明快で、おそらく姫を幸せにするためにと言い寄る貴公子たちや翁や媼まで不幸にしてしまう自らの業のことだろう。問題は「罰」の方だ。アタクシはこれについて、月の世界から地上界に遣わされたことそのものであろうと解釈した。そしてその罰であった地上界での生活に耐えかね、月に帰りたいと願ってしまった。その願いが叶えられたこともいつしか姫にとっての「罰」となってしまったのかな、と。言葉にするのが難しいのだが、そんな風に観ていた
色彩に満ちた地上界に比べて、月の世界へと帰る姫たちの姿から色彩が失われ、モノクロームの世界に帰っていく、という描写から、この作品における姫の地上界での生活が「生」であり、月の世界が「死(冥界)」である、という解釈はごくごく自然に出てきそうだ。確かにこの世から逃れたいと願ってしまった姫の行く先は「現世からの離脱=死」なのかもしれないが、アタクシはあくまでこの作品が描き出したのは「生」であり、思うままに行きたいと願いながら生命を輝かすことができぬ人間の業だとか性(さが)といったもの、そしてそんな穢れた世界でも瞬間瞬間は色彩に満ちたものだ、ということだろうと思う
この映画はとくに答えを提示しない。「生きろ」などと説教めいたことも言わない。ただ、原作が既に持っている人間の業をかぐや姫の心象や感情とともに描き出すのみだ。だがそこが気に入った