スチームボーイ
また日記を1日サボってしまった。そこでネタを求めて、というわけではないのだが、大友克洋の新作映画「スチームボーイ」を観てきた。これからその感想を書くが、これから観るつもりの人は読まないでね
- 出版社/メーカー: バンダイビジュアル
- 発売日: 2005/04/14
- メディア: DVD
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設定は、発明少年、マッドサイエンティスト親子、体制側の科学者、金持ち令嬢、警察、軍隊と冒険活劇の要素満載となっているのだが、物語の焦点も作者の意図もどこにあるのかさっぱりわからない。キーワードとして「科学」があるのだが、それをはっきり肯定するわけでも否定するわけでもない。かと言って観客に判断を委ねるような場面もない
登場するメカの数々についても、登場してはぶっ壊れて退場の繰り返しで、物語の展開にほとんど絡んでこない。さりとてとにかくメカを見せればよい、という風でもない。完全に機械化されたと思われた重歩兵が実は中に人間が入って操っていた、という件があるのだが、それすら「それがどうした」と言わんばかりにその後のいかなる展開にも関係してこない
大都市ロンドンで大騒動を起こすあたりはいかにも大友的ではあるが、破壊が目的にしては中途半端。各々のキャラクターも印象が薄く、互いの関係性も希薄。主人公がピンチを迎えてもあっさりと解決してしまうし、どんなに高いところから落ちてもケガ一つしない。心理的にも肉体的にも切迫している感も薄く、恐怖感がまったく伝わってこない。これではキャラクターに思い入れもできない
簡単に結論を言えば、すべてが中途半端なのだ。おいしそうなシークエンスを次々と用意はするが、食い散らかすだけで料理しない。何かが一段落するたびに「そんで?」という冷めた疑問ばかりが出てきてしまうのだ
つまるところこの映画では結論を求めることそれ自体がタブーなのかもしれない。作者本人が結論を出すつもりなどさらさらないのだから、見る側が邪推をめぐらしたところでどうにもなるまい。ただ「こういう騒動でした」と思って見るしかないのだ。しかしこれってエンターテイメントとは言えないと思うのだけど
物語についてはこんなところ。はっきり言ってペケペケ。それ以外の部分について触れておくと、作画は精緻の一言。暗い場面が多いのでディテールのすべてが見えたわけではないが、非常に情報量の多い映像の連続だった。前述の声の出演者に関しては、主役の鈴木杏の演技は悪くなかった。少年っぽさをうまく出していたし、意外にもごく自然に耳になじむ声だった。小西真奈美はいろいろご意見もあろうが、わしはダメ。あのわざとらしいキンキン声が耳に痛くて不快だった。祖父役の中村嘉律雄は完全なミスキャスト。うまいヘタ以前に活舌が悪くて何言ってるんだか聞き取りにくかった。スティーブンスン役の児玉清はやや硬質の品のある発声が役にハマっていた