「グッバイ、レーニン!」
謎のピアノマンとそのストーリーが酷似していると言われているイギリス映画「ラヴェンダーの咲く庭で」で、ピアニストならぬヴァイオリニスト役を演じたのが若手ドイツ人俳優のダニエル・ブリュール。その彼が主演した「グッバイ、レーニン!」をWOWOWで鑑賞した
- 出版社/メーカー: グラッソ(GRASSOC)
- 発売日: 2004/10/16
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このアレックスの偽装工作がもっと単純に笑えるものなのかと思ったのだが、どこか物悲しく、寂しさすら感じる。嘘自体に罪が無いのはわかるし、エピソードも滑稽なのだが、嘘に嘘を重ねるほど、だまされ続ける母親が哀れに思えてきてしまう。しかし最後の最後でアレックスの恋人ララから真実を告げられ、すでに社会主義体制が崩壊したことを知りながら、アレックスの用意した「理想のドイツ統一ニュース」を見つめるシーンでそれらが不完全ながらも相対化され、さわやかな後味を残してくれる。息子の作り上げた「嘘」の中に、彼の成長と自分への大きな愛を感じたがゆえの満足げな表情がすばらしい
前述のシーンがおそらくこの映画一番の見所になると思うのだが、わし個人としては西側に亡命した父と再会する場面が一番グッときた。父が主催するパーティーに黙って入り込んだアレックスが、初めて会う「弟・妹」と一緒に自分が子供のころ好きだったSFアニメ番組を見る。子供の夢と楽しみに東も西もなく、今も昔もない。そんなことを仄かに感じさせる短くも穏やかな時間。この場面にわしは涙してしまった
見ている間、どうしても拭いきれなかった感覚が既視感。どこかで見たような演出にどこかで聞いたような音楽。ストーリーや舞台も過ぎし日のノスタルジーを感じさせるのだが、映像そのものにもどこか懐かしさのようなものがある。演出は、はっきりいってしまえばキューブリックやジュネにそっくりなので、それが一因かとは思うが、ハリウッドでよく見る俳優にはない出演者の味もノスタルジーを形作る大きな要素かもしれない
主演のダニエル・ブリュールはよく言えばソフト、悪く言えばパンチが無い。ハリウッドで言うとジェイク・ギレンホールやトビー・マグワイアと似たような雰囲気の持ち主。この手の「ハニカミ系(笑)」若手が持てはやされる傾向は世界的な流れなのだろうか?