カメラと映画と日本が好き

平成27年6月にはてなダイアリーから引っ越し。岩手県在住の49歳会社員。某マスコミに近いところ勤務。家族:相方&息子 祖国の未来を憂い、特定アジアと国内の反日分子を叩くことに燃えつつ、のほほんと写真を撮ったり映画を観たりするのを趣味とする男の日々。平成26年に突如としてランニングをはじめ、現在ドハマり中

「グッバイ、レーニン!」

謎のピアノマンとそのストーリーが酷似していると言われているイギリス映画「ラヴェンダーの咲く庭で」で、ピアニストならぬヴァイオリニスト役を演じたのが若手ドイツ人俳優のダニエル・ブリュール。その彼が主演した「グッバイ、レーニン!」をWOWOWで鑑賞した

グッバイ、レーニン! [DVD]

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社会主義政権下の東ベルリンに暮らす青年アレックス。彼の父は家族を残して西側に亡命。残された母親はその反動から社会主義への忠誠を誓い、体制のために奉仕することを生きがいとするようになる。建国記念日の夜、反体制デモに参加したアレックスを見た母はその場で心臓発作を起こし、昏睡状態に陥る。そんな中社会主義体制が崩壊、東西ドイツが統一されてしまう。やがて昏睡から目覚めた母に再び大きなショックを与えぬよう、アレックスは東側体制が続いているという偽装を始める。母のためにはじめた小さな、善意の嘘はやがて周囲を巻き込み日増しにエスカレートしていく、、、といったストーリー


このアレックスの偽装工作がもっと単純に笑えるものなのかと思ったのだが、どこか物悲しく、寂しさすら感じる。嘘自体に罪が無いのはわかるし、エピソードも滑稽なのだが、嘘に嘘を重ねるほど、だまされ続ける母親が哀れに思えてきてしまう。しかし最後の最後でアレックスの恋人ララから真実を告げられ、すでに社会主義体制が崩壊したことを知りながら、アレックスの用意した「理想のドイツ統一ニュース」を見つめるシーンでそれらが不完全ながらも相対化され、さわやかな後味を残してくれる。息子の作り上げた「嘘」の中に、彼の成長と自分への大きな愛を感じたがゆえの満足げな表情がすばらしい

前述のシーンがおそらくこの映画一番の見所になると思うのだが、わし個人としては西側に亡命した父と再会する場面が一番グッときた。父が主催するパーティーに黙って入り込んだアレックスが、初めて会う「弟・妹」と一緒に自分が子供のころ好きだったSFアニメ番組を見る。子供の夢と楽しみに東も西もなく、今も昔もない。そんなことを仄かに感じさせる短くも穏やかな時間。この場面にわしは涙してしまった

見ている間、どうしても拭いきれなかった感覚が既視感。どこかで見たような演出にどこかで聞いたような音楽。ストーリーや舞台も過ぎし日のノスタルジーを感じさせるのだが、映像そのものにもどこか懐かしさのようなものがある。演出は、はっきりいってしまえばキューブリックやジュネにそっくりなので、それが一因かとは思うが、ハリウッドでよく見る俳優にはない出演者の味もノスタルジーを形作る大きな要素かもしれない

主演のダニエル・ブリュールはよく言えばソフト、悪く言えばパンチが無い。ハリウッドで言うとジェイク・ギレンホールトビー・マグワイアと似たような雰囲気の持ち主。この手の「ハニカミ系(笑)」若手が持てはやされる傾向は世界的な流れなのだろうか?