「UDON」
日曜日、ヒマだったので相方とワーナーマイカル北上へ。時間がピタリと合ったので「UDON」を観てきた
- 出版社/メーカー: ポニーキャニオン
- 発売日: 2007/03/07
- メディア: DVD
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以下ネタばれだらけ
物語はなぜか完全な二部構成。夢やぶれて故郷に帰ってきた主人公が、自らのソウルフード「うどん」の魅力に取り付かれ、ブームを巻き起こそうと奔走する前半と、うどん職人の父が死んで、父の味を追い求めて努力を重ねる後半に分かれている。演出はきわめてテレビ的。とくに前半部分はまるでバラエティ番組の再現映像の連続で、映画的なスケール感や空気感はまるで感じられない
各々のエピソードはそれなりに面白いのだが、基本的に無駄な場面が多すぎる。主人公とその周りの登場人物たちもどこか記号的で空々しい。行動原理が単純すぎる上に、あまりに苦労なく事を成してしまうせいか、成長が感じられず人物像に深みが出てこない。今ひとつテンポよく物語に引き込まれていかないのは、このキャラクターの魅力が決定的に足りないせいではなかろうか?
無駄な場面、無駄なカットの数々にはどうも監督個人の趣味が反映されている気味がある。鈴木京香演じる主人公の姉がうどんの汁を飲み干す中途半端に長めのカットは伊丹十三の「タンポポ」のほぼ完全なパクリだし、押井守演出のイタダキもそこかしこに見られる
連続するエピソードにしても、観客から見れば無駄とも思えるカットの数々も、監督にとっては捨てがたいものばかりなのだろう。それはわかるが、これではあまりに詰め込み過ぎというものだ。どんなにエピソードを畳み掛けても全体の尺があそこまで長くなってしまうと観客は飽きてしまう。先に書いた「2部構成」も結局詰め込み過ぎた結果なのだろう。ある程度確信犯めいたものも感じないではないが、観客をどこへ導こうとしているのか、それがわからない。「見せすぎた」せいで結果として「何を見せたいのか」が見えなくなってしまった典型例だろう
主人公が「記憶にない」と言っていた父の笑顔を見せたいがために、死後の父を二度登場させたのも余計。あれは一度にまとめてもまったく問題ないはずだ
父の味を再現し、父の思いに触れた主人公が再びNYに渡るくだりもあそこまで見せる必要はない。映画の文法として幼い日に父に語った将来の夢「キャプテンうどんになる」。そのセリフがあるのだから、見せなくても観客にはわかる。とは言え「キャプテンうどん」を役者として演じる、という結論はいただけない。そんな非現実的な夢の実現のために父のあのセリフがあったわけではなかろう
一言で言えば、劇場で見るほどの作品ではない。決してつまらないことはないがテレビで十分だろう