カメラと映画と日本が好き

平成27年6月にはてなダイアリーから引っ越し。岩手県在住の49歳会社員。某マスコミに近いところ勤務。家族:相方&息子 祖国の未来を憂い、特定アジアと国内の反日分子を叩くことに燃えつつ、のほほんと写真を撮ったり映画を観たりするのを趣味とする男の日々。平成26年に突如としてランニングをはじめ、現在ドハマり中

シッコ

観よう観ようと思いつつすっかり忘れていたマイケル・ムーア監督の作品。ようやくDVDで鑑賞

シッコ [DVD]

シッコ [DVD]

ムーア監督が自らのウェブサイトで医療保険に関するトラブルの体験談を募集したことをきっかけに、アメリカの医療制度の問題を描き出した作品

前作「華氏911」を観たときにも書いたことだが、本作を観て感じたのはマイケル・ムーアの祖国愛。とかく反動、反政府分子と見られがちのマイケル・ムーアだが、彼の作品の根底に流れているのは一貫して「祖国アメリカよ、偉大であれ」という切なる願いであり、愛情であろうと思う

怪我や病気の治療費として高額の請求をされた無保険の人々、保険に加入していながら治療方法や既往症の存在などを理由に治療費支給を拒否された人々、保険会社で支給拒否のための調査業務に携わった人々などへのインタビューを通じ、アメリカ国内に横たわる医療保険制度の問題点を次々と暴いていくくだりは生々しく、説得力がある。保険会社と医療機関が結託して生まれた利権の構造、その下で十分な治療を受けられずに泣き寝入りせざるを得ない一般国民の姿には思わず背筋に寒いものが走るほど。しかしこれだけ重いテーマを扱いながら、エンターテインメント性を失わず、軽妙なテンポで観客を引き込む演出手腕は相変わらず見事だ

国内の問題から視点を外国との比較に転じて以降は残念ながら少々強引な部分も見受けられる。カナダやフランス、イギリス、キューバ国民皆保険制度は確かに理想的ではあるが、それだけをもってアメリカより社会制度が発達しているとは言えまい。それなりの不都合や問題点もあるはずだが、それらの点にはすべて目をつむり、都合の良い条件の比較だけで語ろうとするのはフェアではない。事実この映画では平均寿命の比較で医療制度発達度合いの指針とするような表現が出てくるのだが、医療自己負担のある日本は先に挙げたどの国よりも平均寿命が長い。だからこの作品では日本の医療制度には触れられていない。これはこの映画にとって日本の医療制度に関する情報が「不都合」なものだったからだと言われても仕方ないだろう

ともあれ、社会のさまざまな面で転換点に立つ日本国民としては、いろいろ考えさせられる作品。秋の夜長に家族や友達とこういう映画を観て、意見を戦わせたり、体験を語り合ったりするのもなかなか面白いのではなかろうか