カメラと映画と日本が好き

平成27年6月にはてなダイアリーから引っ越し。岩手県在住の49歳会社員。某マスコミに近いところ勤務。家族:相方&息子 祖国の未来を憂い、特定アジアと国内の反日分子を叩くことに燃えつつ、のほほんと写真を撮ったり映画を観たりするのを趣味とする男の日々。平成26年に突如としてランニングをはじめ、現在ドハマり中

潜水服は蝶の夢を見る

WOWOWの放送を観たのは先月のことなのだが、すっかり忘れていたのでディレイエントリー

人気雑誌ELLEの編集長ジャン=ドミニクは病院の一室で目覚める。だが身体の自由はきかず、言葉もしゃべれない。彼が唯一かろうじて動かせるのは左目のまぶただけ。やがて彼はまばたきでアルファベットを一文字ずつ綴るという新たな意思伝達の手段を手に入れる。妻子や言語療法士らに支えられながら、ジャン=ドミニクは人生への希望を取り戻し、自伝の執筆に挑む、、、といったストーリー

映画の前半ほとんどはジャン=ドミニクの限られた視点で描かれるため、画面から得られる情報が極端に限られ、それが強いストレスを生む。しかしこの演出によって観客はジャン=ドミニクの境遇を疑似体験することになる。絶望的な状況と閉塞感が支配する中、ジャン=ドミニクがまばたきによるコミュニケーション手段を得て外界への扉が開かれていくにつれ、映画の画面もまた広がりを見せ、ジャン=ドミニクの視点から自由になっていく。このあたりの演出が実に巧み

希望を描きつつも主人公の置かれた状況そのものに大きな変化は無いし、その現実は非常に重いものでありながら決して悲劇性だけを追わず、どこかユーモアを保ち続けるのは体験者自身の言葉に基づいたリアルさゆえだろう

気が遠くなるような膨大な時間と手間をかけて綴られた真実の物語を前にすると「感動」などという言葉すら陳腐に思えてくる。ただただ圧倒されるばかりだった