カメラと映画と日本が好き

平成27年6月にはてなダイアリーから引っ越し。岩手県在住の49歳会社員。某マスコミに近いところ勤務。家族:相方&息子 祖国の未来を憂い、特定アジアと国内の反日分子を叩くことに燃えつつ、のほほんと写真を撮ったり映画を観たりするのを趣味とする男の日々。平成26年に突如としてランニングをはじめ、現在ドハマり中

サマーウォーズ

息子を実家に預けて映画館へ。細田守の最新作「サマーウォーズ」を見てきた

サマーウォーズ [Blu-ray]

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誤解のないように最初に書いておくと面白かった。娯楽作として確実に及第点をあげられる作品にはなっていると思うので、これから観に行く方はご安心を。まあ、先にこれを書くってことは後は苦言ってことになるわけだけどw

高校生のケンジは憧れの先輩・陣内ナツキから「田舎に行くだけ」というアルバイトを頼まれる。軽い気持ちで応じたケンジだったが、ナツキの本家は武家の血筋を受け継ぐ旧家。アルバイトの内容は、90歳の誕生日を迎える曾祖母・栄の前でナツキのフィアンセのふりをするというものだった。あわてるケンジだったが、なぜか栄はケンジをナツキの相手と認める。訳も分からぬまま迎えた最初の夜、ケンジの携帯電話に「解いて」とのメッセージとともに数列が並ぶだけの謎のメールが届く。もともと数学が得意なケンジはこれを数学の問題と考え、解答を返信してしまう。しかしケンジが解いたその数列は、世界中にユーザーを有するインターネット上の巨大仮想世界「OZ(オズ)」のセキュリティコードだった、、、といったストーリー

最初にも書いたが、娯楽作としてよく出来ている。笑えるし、高揚感はあるし、静かに魅せるシーンもあればアクションもドタバタもある。およそエンターテインメントとして過不足無く仕上がっている。この点は細田監督の前作「時をかける少女」に勝るとも劣らない。しかし、わしは何か物足りないものを感じてしまった

まず必然性の無さ、強引さが目に付いた。学校中の男子から憧れられる存在のナツキはなぜケンジを選んだのか。単にヒマそうなヤツに声をかけたといっても自分の実家へ連れて行き、フィアンセ役まで演じさせるのだから、何か理由付けがほしい。ケンジの数学の才能をナツキが知ったのは、上田の実家に行った後のことだし、それが役に立つ展開になったのもまったくの後付け、偶然に過ぎない。逆にナツキが、ケンジに何かを見出したという描写があれば、その後の彼の活躍にももっと説得力が与えられたと思うし、ケンジのキャラクターにももっと魅力を与えられたはずだ。これと関連するがナツキのキャラクターも弱い。世界の命運を託せるほどの人材とも思えない。「かわいければオーケー」というのは却下。キャラクターの魅力を造作が引っ張る、というのは演出の邪道だろう

物語の前半でケンジが見知らぬ大家族に囲まれて困惑する様子が描かれていながら、後半は家族の存在を肯定的に捉え、自らその中に身を投じて行くようになるのだが、その変心がどの段階で為されたものなのか皆目わからない。栄からナツキを託されるシーンは一つのきっかけではあろうが、それだけではケンジの変心と自立の理由としては弱い。ここは主人公が主人公たる資格を得る過程にあたるのでしっかり描いて欲しかった

ケンジの数学力が最後の戦いを制す上で重要なファクターになっているのだが、彼の才能の程がまったくといいほど伝わってこないのも問題。この辺は観客にまったくわからなくてもよいから、「わからないけど凄い」というところを描いてくれないと説得力に欠ける

さらに言えばOZに関わる重要人物がああも身内に集中するというのもあまりに都合が良すぎる。世界が危機に瀕しているそのときに世界を救う人材が日本の片田舎に集まっている。その設定自体は面白いがその理由が「偶然」ではいささか興ざめというものだ

ネット世界を牛耳り、現実世界に災禍をもたらす人工知能を人間の英知で倒す、、、という設定自体やり尽くされた感がある。せっかく旧家の大家族を出してきたのだから、もっと地に足のついた身近な闘いを用意した方が面白くできたと思うし、客層も広がったのではないだろうか。ギャップを楽しむにしても基本的にメインキャラクターはその旧家から半ばドロップアウトした連中なのだから、あまり意味がない。もっとも「アニメオタク層がメインターゲットだから別に良いんです」と言われれば身も蓋も無いが

時をかける少女」は現代の高校生にしては妙にウブな恋に恋する少年少女像を描いていたが、本作もそれは同じ。ただしどうせやるなら正面切って描いてくれればよかったものを、変に照れが入ってしまったせいでアラフォーオヤジから見るとかなり小っ恥ずかしい描写になってしまっていた。ラストシーンで今どき少女マンガでもやらないようなベタな純情っぷりをオチにもってくるくらいなら、なんでケンジにあんな言葉を叫ばせたのか。そこに「一線を超えた*1」少年の成長を描かなくてどうする、と思うのはわしだけだろうか

以上、あの「時をかける少女」の細田守監督作ゆえにいろいろ文句を書いてみた。要は自分が「気に入らない」点を書き連ねただけの話。実際はツッコミどころのマイナス分を差っ引いても十分に及第点を与えられる良作。観ている間たっぷりと楽しませてもらったことは確かだ
ポチッとな

*1:あくまで形而上の要素の話ね