カメラと映画と日本が好き

平成27年6月にはてなダイアリーから引っ越し。岩手県在住の49歳会社員。某マスコミに近いところ勤務。家族:相方&息子 祖国の未来を憂い、特定アジアと国内の反日分子を叩くことに燃えつつ、のほほんと写真を撮ったり映画を観たりするのを趣味とする男の日々。平成26年に突如としてランニングをはじめ、現在ドハマり中

第9地区

プロジェクターを撤去するときに相方から「会社帰りにときどき映画見に行ってもいいよ」と言われていたことを思い出し、入場料が千円になる木曜日のメンズデーに合わせて「第9地区」を観に行くことにした「エビ」と呼ばれて蔑まれ、劣悪な環境の下、外界から隔絶された居住区で暮らすエイリアンたちが何のメタファーであるかは、そこがかつて人種隔離政策が行われていた南アフリカの地であることを説明せずとも明白だろう。しかしそれは「社会派」のお墨付きを得るための手段に過ぎないように見える。むしろ狙いはそこではなく「こういう絵を撮りたい」あるいは「見せたい」という(SFオタク的な)映像製作者の無邪気なまでの欲求の実現にあるように見えてならなかった

実際、映画はそうした「おいしい」映像のオンパレードだ。都市の上に浮かぶ巨大な円盤、甲殻類を思わせるエイリアンの造形、エイリアンの一撃で吹っ飛ぶ人間、飛び散る肉片や血しぶきなどの体液、時間の経過とともに異形のクリーチャーに変身していく人間、大きさも強さも「ちょうどいい」パワードスーツ、etc.etc.、、、。これらが息もつかせぬ展開で次々と登場する。それを観るだけでも十分に楽しめる作品に仕上がっている

もちろんそうしたクリエイター的欲求のストレートな発露が一義的だとしても、ストーリーに仕組まれたメッセージ性が完全におざなりにされているというわけでもない。見た目に醜く不潔なエイリアンとの対比の中で人間こそが物語の中で最も醜悪な顔をのぞかせる辺りの見せ方はむしろ厭味に思えるほど巧い。次第にエイリアンの表情に感情の機微を読み取れるようになり、親子の情愛に人間への憎悪すらにじませることができるのは演出の力以外の何者でも無い

決して新しいタイプの映画ではない。B級SFの趣味的世界観とわかりやすい心の浄化のドラマの組み合わせは古典的ですらある。しかしそれをここまで真正面からやり切られてしまうとこれは拍手を送らざるを得ない