カメラと映画と日本が好き

平成27年6月にはてなダイアリーから引っ越し。岩手県在住の49歳会社員。某マスコミに近いところ勤務。家族:相方&息子 祖国の未来を憂い、特定アジアと国内の反日分子を叩くことに燃えつつ、のほほんと写真を撮ったり映画を観たりするのを趣味とする男の日々。平成26年に突如としてランニングをはじめ、現在ドハマり中

「やっぱり猫が、、、」もとい「かもめ食堂」

過去のない男」のマルック・ペルトラが出演しているとのことで前から気になっていた作品。群よう子原作ということは知っていたのだが、調べてみたら最初からこの映画のために書き下ろした話らしい

かもめ食堂 [DVD]

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出演は小林聡美片桐はいりもたいまさこ、マルック・ペルトラほか。そのせいかどうしても「やっぱり猫が好き?」とか思ってしまうのだが、ついに最後まで室井滋が登場することはなかった

人物像の掘り下げは非常に浅い。むしろ表面的な心地よさだけを淡々と描写しつづけることで、観客の想像力に訴えようという狙いなのだろう。が、それゆえに登場人物たち(とくに日本人)のどこか余裕のある態度が多少鼻につく。ヘルシンキで「かもめ食堂」を開業したサチエは客が来ないのにどうやって生活しているのか?そもそも開業資金はどうやって稼ぎ出したのか?偶然サチエと知り合うミドリやマサコも金銭的には何の不自由もなく、ただなんとなく食堂を手伝いはじめる。そこには生活を送る上での切迫感は微塵も感じられない。登場人物の経済的背景など初めから考える必要もない要素なのかもしれないが、「やりたいことしかやりたくない」という理想の生活を単純に映像化したかのような設定に今ひとつ受け入れきれないものを感じてしまった

「なぜフィンランド?」という問いにも結局答えは出てこない。この辺は多分に作者の趣味の領分なのだろうが、単にスローライフをわかりやすく推奨するための記号として舞台に選んだだけなのではないか?との疑念が拭いきれない。この辺の「甘さ」や先に書いた切迫感の無さは、田舎に遊びに来た都会暮らしの人間が表面的な部分だけを見て「良い所ですね〜」を連発するときのあのなんとも言えない居心地の悪さに似ている

ストーリーは「仕事に疲れたOLの願望」そのもの。サチエの台詞に「やりたくないことはやらない」というものがあるが、まさにその言葉のままに「かもめ食堂」を開店し、自分の思うままに「誠実に」店を経営していればきっと客がくると信じ続け、いつのまにやら周囲に認められていく。そこに「汗水流さずに認められたい(白人に)」という鼻持ちならぬ欲望が見え隠れしてしまう、と言っては意地が悪すぎるだろうか?

とまあクドクド批判めいたことを書いてはみたものの、先に挙げたマイナス点はすべて見終わった後に噴出してきたもの。観ている間はかなり楽しんでしまっていた。小林聡美はもともと大好きだし、この映画での彼女は本当にキレイ(いろんな意味で)。冒頭のモノローグも良い。主人公のキャラクター紹介的な位置付けになっているのだが、肩の力の抜けた語りがヘルシンキの風景と相まって心地よく作品世界へ引き込んでいく。共演者との相性も良い。特異なキャラクター故に役柄の幅が狭い片桐はいりもたいまさこらも映画の雰囲気によくマッチしていた

ストーリーに見るべきものはあまりないが、役者同士の絶妙な「間」と、その「間」が生み出す柔らかな空気感は十分に観るに価する。この「間」こそ、この作品の魅力のすべてと言っても過言ではない