カメラと映画と日本が好き

平成27年6月にはてなダイアリーから引っ越し。岩手県在住の49歳会社員。某マスコミに近いところ勤務。家族:相方&息子 祖国の未来を憂い、特定アジアと国内の反日分子を叩くことに燃えつつ、のほほんと写真を撮ったり映画を観たりするのを趣味とする男の日々。平成26年に突如としてランニングをはじめ、現在ドハマり中

「殺人の追憶」

殺人の追憶 [DVD]

殺人の追憶 [DVD]

デジタルWOWOWで録画、D-VHSにムーブして長らく眠っていたのをようやく観た。130分と少々尺が長いので飽きずに観られるかどうか心配だったのだが、思いのほか楽しんで最後まで一気に観られた

若い女性だけをターゲットにした猟奇殺人と犯人を追う対照的な性格をもつ2人の刑事。どこか懐かしいタッチの推理サスペンスの趣で、子供の頃に見た「特捜最前線」などの刑事ドラマを観るような感覚で楽しめた

いい加減な捜査で手柄を急ぐ田舎刑事と冷静かつ論理的に犯行を分析するソウルから来たソ刑事が、捜査の進行とともに立場を変え、次第にソ刑事の方が苛立ちを募らせていく演出が巧い。あえて言えばソ刑事の背景がまったく見えてこないので、二人の刑事の捜査姿勢の対比のみでしか人間ドラマを深められなかった部分は少々残念

中身は骨太のサスペンス。刑事ドラマであるにも関わらず最後まで事件は解決せず、カタルシスもない。それでいて決してエンターテインメント性を損なわなかった、というのはなかなか凄いことだ。そういう意味では、ドラマの重みを排してカタルシスに重きを置いた「フライト・オブ・フェニックス」とは正反対のアプローチで作られた娯楽作と言える。どちらが好きかは単純に好みの問題だと思うが、どちらも娯楽作としてよく出来ていることに違いない。後味は決して良いとは言えないが、ハリウッド的能天気さに飽きたときには、こういう変化球も悪くない

主演のソン・ガンホが良い。ちっとも美男ではないがハマリ役。このドラマに見目良いだけの韓流スターは必要ないし、むしろ邪魔にしかならないだろう。「ストイック」とはまた一味違うオッサンの生臭さが映画の雰囲気によく合っている

ただどうしてもいただけない点がある。これはこの作品に限らず、韓国映画一般に見受けられる傾向のように思えるのだが、とにかく登場人物が他人を気安く殴る、蹴る、物を壊す。しかも抵抗しない弱い者を容赦なく叩きのめす。刑事ともあろうものがちょっと興奮しただけですぐ暴力的に振舞うのはあまりにも気分が悪い。嘔吐や死体を描写した直後に焼肉を食べるシーンが挿入されるのも狙いなのだろうが、あまりに悪趣味という感がする。コミカルに描いているつもりなだけかもしれないがどうにも受け入れ難かった

そうした嗜好の違いに目をつむれば十分に楽しめることだろう。推理サスペンス好きには自信をもってお奨めできる一作だ