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カメラと映画と日本が好き

平成27年6月にはてなダイアリーから引っ越し。岩手県在住の45歳会社員。某マスコミに近いところ勤務。家族:相方&息子 祖国の未来を憂い、特定アジアと国内の反日分子を叩くことに燃えつつ、のほほんと写真を撮ったり映画を観たりするのを趣味とする男の日々。平成26年に突如としてランニングをはじめ、現在ドハマり中

BSアニメ夜話「母をたずねて三千里」

わしがテレビアニメの一大金字塔と位置づけている「三千里」。一般的な良作として語られることはあっても、公の場で踏み込んだ作品論が語られることのなかったこの作品を取り上げてくれたことがうれしい

この番組の最後で岡田斗司夫が重要な指摘をしていたのだが、本当にこの作品、ちゃんと通して全部を観た、という人が少ない。多くの人は「観た気」になっているだけで、例えば「なぜアンナ(マルコの母)はアルゼンチンに出稼ぎに行かなければならなかったのか?*1」とか「そもそもピエトロ(父)は何をしていたのか?*2」とか「マルコはどうやって大西洋を渡ったのか?*3」と言った物語の基本設定すらほとんどの人は知らない

にもかかわらず「三千里」が「みんなが泣いた不朽の名作」に祭り上げられているのは、ひとえに「なつかしのアニメうんぬん」という番組のせいだとわしは考えている。あの手の番組で繰り返し流される「波止場での母との別れのシーン」「病床の母との再会シーン」と、その他の断片的な記憶とを組み合わせて「観た気」になっているのだけなのだと思う

実はわしは10年以上前に一度「三千里」を研究するホームページを立ち上げたことがある。そのホームページは「なつかしのアニメ」番組で「三千里」をほとんど観てもいないにも関わらず、「感動した」だの「泣いた」だの「マルコがかわいそう」だのといった軽薄な発言を臆面もなく垂れ流すテレビタレントに対する怒りを動機にしたものだった*4。その後ホームページはあまりにも言及したい項目が多くなりすぎ、テキストの量が膨大になったのでまとめきれずに挫折したのだが、かつて「三千里」という作品を論ずる試みをしていた者として今回の放送は待ちに待ったものと言えた

「三千里」は「泣ける名作」として「フランダースの犬」や「小公女セーラ」などと並び称されることがあるが、わしから見ればちゃんちゃらおかしい。ネロやセーラは劇中とにかく苛められる。悪意に満ちた大人が、その捻くれた心証から特段の理由もなく少年少女を苛め抜く

しかし「三千里」ではそんな悪意の人物はほとんど登場しない。時折マルコに辛く当たったり、憎まれ口を叩く人物も登場するが、その行為にはすべて理由がある。それは例えば貧困からくる余裕の無さであったり、ひがみであったり、たまたま虫の居所が悪かったり。マルコは理由もなく殴打されたり、過酷な労働を課されたりするようなことは無いし、マルコの側も理不尽な現状に甘んじたままでいることはない。この辺りの人間の描き方、その多面性が決定的に異なるのだ

番組では小田部羊一がゲストで出演した関係上、絵に関する話題と高畑勲宮崎駿の話にややシフトしてしまったのが残念。もっと物語や演出について唐沢俊一岡田斗司夫が仔細に突っ込んでいくのを見たかったが、それは叶わなかった。加藤夏希が「お父さんは何をやっているの?」と発言したのには思わず「おめえ見てねえだろ?」とツッこんでしまったが、その後チキチータの場面を取り上げていたので許す

パネリストが一人一つずつ好きな場面を選んで語るというのが最近の番組のスタイルなのだが、全52話もあるので一つに絞るのはさすがに大変だったろうと思う。わしも一つに絞ろうといろいろ考えたが難しい。三つにさせてもらえれば、マルコが親友エミリオとジェノバの港で交わす会話のシーン(第12話「ひこう船のとぶ日」)、マルコ母子をモデルにした人形劇のラストで母親を殺してしまったペッピーノにコンチエッタが涙ながらに詰め寄るシーン(第28話「バルボーサ大牧場」)、ロサリオに向かう船上で母に会えない不安で元気のないマルコをアレクサンドル船長が励ますシーン(第38話「かあさんだってつらいのに」)、メキーネス家訪問の帰り道、ケーナを吹き、歌うパブロとマルコのシーン(第44話「ファナをたすけたい」)あたりか。って四つになっちまったい。嗚呼、それでもフェデリコじいさんにもシスター・シプリアーナにも老ガウチョ・カルロスにもマヌエルにも触れられないぃぃぃ

正直「三千里」について語りだすと時間がどれだけあっても足りない。「どこが面白いの?」と問われれば「とにかく見ろ!」としか言いようがない。脚本、演出、声の出演、作画、音楽、どれをとってもクオリティーの高い文字通りの名作であることは、全部を観なければ決してわからない。ので、観なさい!w

母をたずねて三千里(1) [DVD]

母をたずねて三千里(1) [DVD]

*1:ピエトロの診療所は資金繰りが苦しく収入を得られないため、生活費を稼ぎに行った

*2:貧しい人々のための診療所を運営している

*3:リオ・デ・ジャネイロへの定期便に密航。失敗するが炊事・雑用係として採用

*4:ついでに言うと「この話キライ」って言うヤツも大抵観ていない

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