THE有頂天ホテル
脚本家・三谷幸喜による映画監督作品の三作目。いずれレンタルビデオを借りようかと思っていたのだが、昨年末にテレビで放送されたので観た
THE 有頂天ホテル スタンダード・エディション [DVD]
- 出版社/メーカー: 東宝
- 発売日: 2006/08/11
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「豪華キャスト」と書いてしまったが、要は「テレビでよく見る」人たちのオンパレード。普通顔の知れた役者をたくさん出すと各々が重要な役回りを演じることを観客に知らせてしまい、後の展開を読まれてしまったりするものなのだが、徹底して有名俳優でキャストを固めた結果、その危険性を見事に回避してしまっている。むしろ芸達者を揃えたことで、各々の役者の「演技バトル」のようなものが随所に展開され(何人かはやりすぎではあるが)、映画の盛り上がりを呼んだとすら言える。この辺は三谷ならではの手腕として積極的に評価したい
映画はやはりドタバタ喜劇の名手らしく、万事テンポ良く進む。相互にまったく関係のないいくつもの話が同時進行する過程の中で重なり合っていく。その辻褄の合わせ方が巧みなので、思わず感心させられてしまう。映画の勢いそのままに観ていられる前半は特にその辺りの畳み掛ける演出が心地よい。が、後半になってくるとあまりにもやり過ぎの感が目立ち、いささか食傷気味。まったくと言って良いほど息をつく間が無いので、観ていてだんだん疲れてくる。わしが観ていたのは地上波のテレビ放送だったので、時折CMが入っていくらか救われたが、劇場で延々これを続けられるとちょっとイヤかもしれない。この辺は「観客を常に引き付け続けなけれならない」という、実に舞台脚本家的な強迫観念に似たものを感じずにはいられない。「ドタバタコメディなんだから、これでいいじゃない」という気もするが、少しくらいは息をついてストーリーを整理する間が欲しい。せっかく作った(であろう)ホテルのセットなんだから、もっとじっくり見せればいいのに、などとおせっかいのひとつも言いたくなる
ついでに言えば、出てくる人物が全員非常にクドく、鬱陶しい。「困った」人物が多すぎて、観ていてイライラさせられる場面が多い。この時点で作者の術中にハマっていると言えなくもないが、最終的にこのことが作品自体の爽快感を減退させているような気もする
クドクド書いてはみたものの、これらの減点要素はすべて三谷監督の旧作「みんなのいえ」「ラヂオの時間」でも感じたこととまったく同じ。ということは、これらは「作風」と言い換えてしまえる類のものなのかも知れず、言うだけ野暮というものかもしれない
いずれ娯楽作としては十分に合格点。観るには価するが、再見するには「う〜む」といったところだろうか?