おくりびと
相方と息子を相方の実家に預けてきたので家に一人。夜のテレビ番組もさっぱり面白そうなものがなかったので録画しておいた「おくりびと」を観た
- 出版社/メーカー: セディックインターナショナル
- 発売日: 2009/03/18
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納棺、火葬、葬儀といった人の死に関わる一連の儀式が、死者その人のために行われるというよりも、本質的には死者の周辺を生きてきた「残された人々」のために営まれるものであり、故人がこの世から旅立ったのだというその事実を受け止めるための過程なのだということが、納棺師の能にも似たある種雅な所作とそこに流れる静謐な時間から伝わってくる。しかしながら、その描き方は重さばかりを強調するものではなく、ときに軽妙なやり取りを通じて、ある個人の「死」さえも人が綿々と伝え繋げてきた日常の一部に過ぎない、ということも教えてくれる。このバランス感覚が実に良い
登場人物を絞り、主人公の物語をじっくり見せていく方向にしたのは正解だろう。脇の俳優陣が素晴らしいので台詞で説明するような場面が無くても十分に演出の意図は伝わる。ただ惜しむらくは本木雅弘、広末涼子の主人公夫婦。二人ともキャラクターを演じたというよりは自分のカラーをそのままキャラクターに当てはめたような演技。決してヘタとは言わないまでも、山崎努や余貴美子に比べると弱い。とくに広末涼子の十代の頃から変わらぬ少女芝居はいかがなものか。あれだと「かわいい女房」というよりも「人たらしの小悪魔」的イメージになってしまうと思うのだが
もう一つ言えばラストのプロットがやや不満。頑なに父を拒絶する大悟を説得するにはああするしか無かったのかもしれないが、あの余貴美子(役名失念)の打ち明け話はあまり必要ない気が。納棺師として人の死を見つめてきたことによる精神的成長から父の遺体を引き受けに行く、ということでも十分納得は行ったと思う。さらにあの「石文」が父の遺体の手に握られている、というのも出来すぎ。父の遺体を前にした大悟が、ふと目をやった遺品の脇にゴミと一緒に転がる「石文」を見つける、、、てな感じの方が自然ではないかと。ま、この程度のダメ出しは外野からなら誰でもできるという程度の話だけど
いずれ確かに傑作だった。小難しそうなテーマの割にシンプルでサラリと楽しめる作品に仕上がっているのが良い。外国人にも理解されたのはそのせいではなかろうか。昨年の日本映画で一番いろんな賞を取ったのがこの「おくりびと」だったわけだが、確かに万人受けする優れた作品だと思う。それでもわしとしては「ぐるりのこと」の方に軍配を上げたい。どちらもキレイごとでは済まない人の営みを優しく見つめた作品だが、「ぐるり−」の方が嘘が少ないと思うから
ポチッとな